開けゴマ!真夜中の王国へようこそ。

Live happily ever after…? — 夢のあとさき、静寂が語りかけるものとは?

yoko nagaiが紡ぐ6つの寓話と親密な音楽空間。

Midnight Kingdom

(2016)

KYO453605

1.Midnight Kingdom

2.Devil’s Dyke

3.Castle Of Tears

4.Soul Messengers

5.Free Flight

6.Midnight Kingdom(Tails of Tales)

all songs are written by yoko nagai

Musicians:

yoko nagai(vocals, rhodes and piano)

Steve Early(sax)

Chris Britt(bass)

Phil McDonald(drums)

Recording Engineers:

Max Mezzowave and Dan Leavers

夜 眠りにつく前の時間が好きです。ラジオから流れる音楽に心を揺さぶられたり、好きな本の温かい語り口に励まされたり、映画の主人公に自分を重ねて一緒に涙したり・・・。

幼い頃から、真夜中の王国で出会う人やメッセージと幾度となく向き合ってきました。その時間の積み重ねが、私の歌を作る大きなきっかけとなっています。そして、生まれた歌はやがて部屋を飛び出し旅をして、多くの人との対話によりさらに変化をしていくもの。

2013年冬のとある真夜中の王国。私は、人と人の心の通い合いが「音楽」を通して伝わって来るようなものに出会いたいと思ったことがありました。刹那的な偶然体験のフラッシュバックではなく、それに触れさえすれば、いつも同じような感情が蘇るような半永久的な何か・・・

繰る日も繰る日もそのイメージはどんどん膨らみ、やがて、求めているものを探し当てるより、自ら創った方が早く出会えて、もっと近くに感じられるものになるのではないかと思うようになりました。それから約半年間、真夜中の王国で、私は自分なりの歌詞と旋律を紡いでいきました。

親密な雰囲気を生演奏で表現する場所に選んだのは、かつて暮らしていた私のもう一つの王国、イギリス・ブライトン。昔トラムの駅舎だったという煉瓦作りのスタジオ。蔵の中からヴィンテージマイクを取り出し、ちょっとだけ音の外れたアップライトピアノ。臙脂色のカーテンを引き、ペイズリー柄のカーペットにスタンドランプ。生のレモンをスライスして作った温かいお茶と大好物のフラップジャックを片手に始まったセッション。息の合う私たちらしい、そのままのオーガニックサウンドに包み込まれる体験をしました。2014年春の、とある一日のたった8時間の出来事です

その音源は後日、郊外の農場にあるトレーラーに構えたデスクで、太陽光パネルで蓄積された電力を頼りにミキシング。小鳥のさえずり、青空と曇り空の繰り返しに、気持ちもチューニングを続けながら王国を築いていきました。

再び自分の真夜中の王国に戻り、編集に約2年もの時間を要したのは、あの6000マイル離れた異国での8時間の体験を、あの部屋にいた人と人の心の通い合いや空気感を、そのまま「音楽」にのせるための試行錯誤があったから。そして見つけました。録音recordingとはすなわち、その場の全てを「記録」すること、そしてlive recordingとはまさに、「生きた証」なのだ、と。

私の極めて個人的な趣味の世界に、人を招き入れたことにより生まれたアルバムが今作”Midnight Kingdom”です。王国はたった一人で守り抜けるものではなく、その連鎖は永遠に続きます。良い時も、悪い時も・・・

今宵あなたの王国が、より親密な「生きる証」となりますように。

2016年 秋

yoko nagai